君子豹変す
「君子豹変す」という言葉を知っている人は多いでしょう。でも本当の意味をご存知ですか?
「君子豹変す(くんしひょうへん・す)」というのは「立派な人は自分が誤っていたとわかれば、すぐに過ちを正す」ということです。ところが、最近は「目上の人が突然手のひらを返すように態度を変える」というどちらかというと悪い意味で使われることが多いようです。
今のようにメディアが発達する前、政治家や先生、専門家が自分の意見を述べる場は相手との会話や会議での発言のほか、新聞や雑誌、会見などのインタビューあるいは講義・講演などであり「ここでこの意見を表明するとこういう人達が聞く、読む」ということをある程度意識することができたのではないかと思います。
そういう時代には自分が発信した情報に誤りがあれば、修正、取り消しを行うこともある程度可能でした。
たとえ立派な人で、世の中に対して影響力を持っている人でも全く間違うことのない人はいないでしょう。時には言っていることが昨日とは全く違う、ということもあるかも知れません。
しかし、意見が変わったことについて、その後触れた情報や自分の分析などをもとに失敗は失敗と認め、過ちをすぐに正すことは間違ったことではなく、むしろ立派なことです。
ところが今は、世界中の人たちが発信者となり、また多くの人がその情報を拡散し、当の発信者は情報のコントロールが非常に難しくなりました。もはや制御不能、といえると思います。
FAKE NEWS
先日、NHK「クローズアップ現代+」で偽ニュース(fake news)に関する特集が放映されていました。
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3929/1.html
今トランプ氏が盛んに「fake news」を非難しています。トランプ氏とヒラリー氏の選挙戦の最中、あるいは大統領決定後もありもしないニュースがまるで真実のように報道されてきたことを非難しています。その指摘がすべて正しいかどうかは別にして。
選挙戦中に流されたfake newsの発信源であったあるネット上の偽ニュース専門サイトのことを報じていました。そこには何の調査も行わず、世間を混乱させることだけを目的に情報をジョークとして発信し、世間の関心を集めたり、笑いのネタにする人たちがいました。
こういう人達がテレビに出演すること自体にとても違和感がありますが、こういう情報がまるで真実であるかのように報道されることは非常に問題です。選挙戦はとてもセンシティブでスピーディーです。イメージダウンが世論や票の行方を左右します。さらに、様々な形で拡散されていくので制御できません。
先日の大統領選挙は僅差だったといえると思います。そんな中ではこうした情報が人々のイメージを大きく動かします。選挙戦の結果に影響があったことを否定することはできないでしょう。
また、同じ番組では、ドイツ人のジャーナリストが取材した映像と内容が全く違う形で拡散されてしまった事例も上げられました。中には有名な世間的には信用力があるといわれるメディアも誤った情報を拡散したといいます。
情報に触れた時のバイアス
人が様々な情報を聞くときに自分にとって教務のある情報、都合の良い情報を優先的に聞くバイアスがかかります。都合の悪い情報や聞きたくない情報はシャットアウトしてしまうことがあります。
番組で取り上げられたジャーナリストは、自分の取材が全く異なる事実として報道されていることについてその内容を否定し、真実を伝えようとする情報も発信しましたが、その情報はほとんど拡散されなかったといいます。
冒頭の「君子」であれば、様々な正しい情報をもとに判断を下すことが前提で、情報が誤っていたりした場合には正しい情報にアップデートしたうえで修正が必要ならば修正する、という行動をとることになるでしょう。
ネットの記事の危険性
新聞の発行部数は1997年をピークに減少し続けています。世帯数の減少も発行部数に大きく影響すると思いますが、ネットで読むニュースに奪われているという現実もあると思います。
ネットでニュースを読んでもらうためにはタイトルが目を引くものである必要があります。ネットニュースでは多くの記事がまず見出しだけ表示され、興味のある人だけが中身の記事を読みます。この「興味」というフィルターが都合の悪いものや、注意が向かなかった記事を読み飛ばしてしまうことにつながります。また、記事を書く人も読んでもらうために多少の脚色を付けることもあります。
スポーツ新聞が「○○逮捕!」とか「△△が結婚!」と書いて、折り目の後ろに「か?」とか「濃厚」なんて書いていたのはかわいいもんです。
ネットで拡散される記事はそのプロセスの中でバイアスがすでにかかっているとみるべきです。
また、その新聞も各社の報道姿勢に違いがあり、同じ出来事を良いように伝えたり、悪く伝えたり、大きく伝えたり、伝えなかったりすることもあります。
この情報社会の生き方
今は世界中の情報を誰でも手に入れられる時代。だからこそ自らの責任で情報を取り入れ、情報の真偽を見定め、活用していく必要があります。
とはいっても、全ての情報をまんべんなくすべて取り入れるのは無理です。
最も重要なのは「すべての情報を鵜呑みにするのではなく、違う可能性も考慮し、疑うこと」
だと思います。
情報をどのようにして自分の中に取り入れるかは事業や投資を行う上でも非常に重要だと思います。
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