市場移転問題をどう考えるか
小池都知事が就任し、1か月半余り。この間に築地⇒豊洲市場移転時期が延期となり、論議が沸き上がっています。
当初は、使い勝手の問題が大きく取り上げられていたが、最近はすっかり「盛り土問題」「地下水問題」「地下空間問題」が問題のメインとなり、当初の問題がすっかりくすんでしまっている。
どうも、この市場移転問題。本来の問題点は違うところにあるのではないかという気がしてならない。
先日、「行動経済学」という比較的新しい経済学の考え方に触れる機会がありました。この「行動経済学」とは「人間の心理・感情」と「経済」との関係を学問としてとらえ、かつ一定の法則、規則性を見出し、2002年にノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンという人の研究に基づいています。
その行動経済学。いまや、マーケティングの世界でも様々な形で活用されているが、その中に「保有効果」という考え方がある。
わかりやすく言えば「現状」を良いものと過大評価する心理のこと。
例えば、全く同じものを「これから買おうとしているもの」に支払う買い値と、「今持っているもの」を売るときに設定する売り値は心理的に今持っているもののほうが「手放したくない」意識が働き、より高く評価するという。
また、ちょっと前に流行った「ワンダーコア」など(まだ流行ってる?)、通販で販売しているものの多くが「返品保証」つまり、「1週間以内」とか「1か月以内」に「効果が表れなかった」「気に入らない」ならば「返品していただければ全額返金します」という保証を付けていた。
実際にはこれにも「保有効果」が働き、「一度手にしたら返すのは惜しい」心理が働き、ほとんど返品はないという。
さて、市場問題。
昭和10年頃に開設された築地市場が老朽化したこと、手狭になったこと、アスベストの問題などもあると言われ移転することが決まった。これまで、築地といえば、魚河岸、海産物の卸売市場の代名詞であり、80年にわたって日本の胃袋を満たしてきたいわば「日本の台所」。
この市場が移転する、となるとそこに働く人や、仕入れに行く人など多くの関係者にとって現状からの大きな変化を求められることになります。
確かに、土壌汚染問題は「食」を扱う市場の根幹を揺るがす大きな問題ではありますが、では今の築地のままでいいのか?というとやはりそれも衛生面なども含め大きな問題があります。
なぜ地下ピットができたのか。土壌汚染対策の結果、現在の汚染レベルの正確な把握、今後起きうる問題。その対処方法などについて前向きに議論され、早期に解決移転が行われることを望みます。時間が延びれば延びるほどロスも発生します。
(東京近郊であれだけの面積で全く汚染がないところなんてないんじゃないかと思う。ヒ素なんかは「自然由来」のものもあり、また、埋め立て地は昔の埋め立ての基準では「OK」だったものがNGになったりしたものもあって、ほとんどのところで何か出るのが当たり前のように思います。アルカリ性の地下水が・・・なんていう話もありましたが、そもそもコンクリートはアルカリ性。当然できたばかりのコンクリートの建物の地下に水があればアルカリ性になるでしょう。)
ロスはすなわち税金で賄われるわけですし、東京オリンピックへの影響もあります。
あの、混沌とした市場の中を所狭しとターレが走り、商品が並び、人が行き来し・・・阿吽(あうん)の呼吸で運営されてきたあの市場が移転したら、直後は混乱して当たりまえ。それは慣れるしかない。トラックの積み下ろしの話もあるけれど、そもそも築地は当初、電車・汽車による搬入が想定されトラック搬入に切り替わったのはもっと後のこと。
インフラも変化し、築地市場そのものも変化の歴史を歩んできました。
ただでさえ、早朝の時間帯に忙しい時間が集中し、混乱が市場機能に与える影響は大きいと思います。しかし、だからといっていろいろ問題のある今の市場に少しでも長く居続けるというのでは良くないと思います。
「正月前後の最盛期を避ける」くらいのタイミングでの移転が望ましいのではないでしょうか。
数年後、10数年後には「海鮮物といえば豊洲」。「日本で最も良いものが揃う豊洲市場」となっていることと思います。
「100%すべての問題が解決しないと移転できない」ではいつまでたっても移転できない気がしてくる今日この頃です。
都の説明がキチンとなされず、混乱を大きくしている、というのは事実だと思いますが。
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