日本社会のアンバランスと個人がとるべき行動

今朝の日経新聞の一面トップは月曜日ということもあり、ちょっと異色の構成だった。

「砂上の安心網 2030年 不都合な未来」と題されたシリーズものになる様子。「チェック無き膨張」の大見出しが目を引く。


社会保障負担の増大が進み、今後ますますバランスを欠くことが確実な中、今、社会全体でその「解」を求める活動を進めなければいけない状況に来ている。

日経新聞に掲載されたグラフでは、1961年時点では65歳以上の高齢者を8.19人の現役世代で支えていたが、現在すでに1.86人で支える構造になっており、2030年には1.65人まで下がるとしている。問題となる社会保障費は主に「医療費」と「年金」だ。 


FP(ファイナンシャル・プランナー)がクライアントに「医療保険」に関するアドバイスをするとき、必ず「高額療養費制度」について言及する。保険治療を受ける限り、健康保険加入者はその負担額に上限がある。上限額を理解し、それでもなお負担となる医療費について医療保険で備えるように付保額をコントロールするようにアドバイスする。

「年金」についてもそうだ。FPは、将来自分や家族が生活するために必要な生活費を算出し、受け取れる年金額を差し引いて不足する部分を老後資金として蓄積する必要があると説明する。

年齢を重ねるごとに健康上のトラブルも増え、収入は減少する可能性が高まる。将来に備える老後資金の確保のための資産形成活動は早く着手すればするほど効果がある。さらに、ある年齢時(例えば、65歳で会社をリタイアするとき)にいくらの資産があれば、その後の生活で苦労しないで済むか、をシミュレーションし資産形成の目標額を定める。個人レベルであれば、このようにして対策をするしかない。


しかし、今その根本を成す社会のシステムが揺れている。

高齢者が増え、医療費は増大している。その多くが「高額医療費制度」により賄われている。当然、その原資を支出している現役世代の負担は重くなっていく。ただでさえ人数が少ないうえに、一人当たりの医療費の額も増大しているというのだから、先述の高齢者を支える現役世代の人数の割合以上に現役世代の負担は増大していく。

年金システムはもともと積み立て方式で設計されたが、いつしか賦課方式に移行し、現役世代が支払った年金は受給者への支払いの原資となり、今の現役世代が将来年金を受給するための原資は確保されていない。

先日、年金改革法案が可決され、年金の支給額は物価ではなく現役世代の賃金の水準で調整される方向となった。年金制度を維持しようと思えば当たり前で、民主党や共産党が「年金カット法案」と揶揄し、反対したもののまともな対案は出せなかった。 医学の進歩とともに高齢者の寿命は伸びている。


今、治療を受けている高齢者の中にはすでに自らの力だけでは命をつなぐことができず医療機器につながれ、多額の医療費を使い、意識もないまま命だけを長らえている人もいる。

「尊厳死」などに対する扱いや、回復の見込みがない患者への「延命治療」については様々な法的解釈などもあり、また人道的な面でも論議があるところではある。社会全体を見据えた「マクロ的視点」では、患者を数日、数週間延命することだけを目的に行われる医療行為は見直すべき、行うべきではない、と考える人も多い。しかし、それがいざ自分の身内のこととなると、たとえ少しでも長く生きていてくれるのであれば延命してほしいと考えてしまったりする。

人の命を人の手で奪うことは許されないだろうが、人為的に「死なせない」ための医療行為を行うことは様々な弊害を産んでいる。


今朝の新聞では、この社会保障制度を改善していくために、どんな社会保証を優先すべきか、どの世代の負担を増やすべきか、といった検討がされている。しかし、状況は待ったなしだ。このままでは現行制度を維持できないことはもちろん、年を追うごとに状況は悪化していく。 「次の世代に負担を先送りしない」といいつつ、今の制度下では高齢者世代が若い世代から吸い取り続けている。


一方、制度改革は国会を中心に行われる。日本では議会民主政治が行われ、議員を国民が選挙で選ぶ。高齢化が進んだ今の世の中では、選挙権を持つ高齢者の意向が色濃く反映される。今後打つべき年金制度改革や医療費改革などの制度はどれも高齢者への負担増を伴うものにならざるを得ず、総論では「仕方ない」と思いつつ、現実的には「でも自分の生活が大事」となる。結果、この改革を声高に謳うと次の選挙で落ちてしまう。


だからこそ、ねじれがなく総理大臣の支持率が比較的高い今の政治状況下で、たとえ強行採決になったとしても力強く改革を進めていかなければならない。


あわせて、年金支給額の減少や支給開始年齢の高齢化、医療保険の今後の動向等に注視しつつ、個人レベルではギリギリの将来計画ではなく、余裕を持ったライフプランニングをすることで不透明な中でも安心できる将来計画を考えておくことが必要だと思う。


我々の先輩世代では何とかなった老後が、これから老後を迎える世代では何とかならないかもしれません。準備してますか?


西山ライフデザインでは、クライアントの「ワンダフルライフ」実現を応援します。何を備えておくべきか考えてみませんか? 

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